ヒト白血病細胞における、メルカプトプリンとチオグアニンの効果に対する、チオプリンメチルトランスフェラーゼの異なる貢献

著者: BlancoJ G, DervieuxT, KrynetskiE Y, RellingM V, RousselM F, VaninE F

原題: Differing contribution of thiopurine methyltransferase to mercaptopurine versus thioguanine effects in human leukemic cells.

概要

チオグアニンとメルカプトプリンは、癌細胞を殺すために活性型に変換される必要がある薬剤である。TPMT酵素は個体間で活性が異なり、これらの薬剤を不活性型に分解することもできるが、活性型も生成することができる。本研究では、TPMT活性の高いまたは低い培養細胞を用いて、酵素がこれらの薬剤の活性化と不活性化にどのように影響するかを調査した。TPMT活性の高い細胞は、チオグアニンに対して感受性が低く、これは酵素によって不活性化された。しかし、これらの細胞はメルカプトプリンに対して感受性が高く、これはその活性型がTPMTによって生成されたことを示唆している。これは、TPMTが主にチオグアニンを不活性化する一方で、活性型を生成することによってメルカプトプリンの有効性に寄与する可能性があることを示している。

論文詳細　

原文の要約 :

Thioguanine and mercaptopurine are prodrugs requiring conversion into thiopurine nucleotides to exert cytotoxicity. Thiopurine S-methyltransferase (TPMT), an enzyme subject to genetic polymorphism, catabolizes thiopurines into inactive methylated bases, but also produces methylthioguanine nucleotide...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

チオプリンメチルトランスフェラーゼ：メルカプトプリンとチオグアニンの効果への異なる影響

チオグアニンとメルカプトプリンは、白血病の治療に用いられる薬剤です。これらの薬剤は、体内ではチオプリンヌクレオチドに変換され、細胞の増殖を阻害することで抗がん作用を発揮します。チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ（TPMT）は、チオプリンヌクレオチドを不活性なメチル化された塩基に変換する酵素です。TPMTは、遺伝子多型の影響を受けやすく、人によって酵素活性に大きな個人差があります。本研究は、TPMTがメルカプトプリンとチオグアニンの効果に異なる影響を与えることを明らかにしました。

研究では、TPMTの発現量が高い細胞株と低い細胞株を作成し、それぞれの細胞株に対するメルカプトプリンとチオグアニンの効果を比較しました。その結果、TPMTの発現量が高い細胞株では、チオグアニンの効果が低下し、メルカプトプリンの効果が上昇することがわかりました。TPMTは、チオグアニンの場合は、チオグアニンヌクレオチドを不活性化する作用が強く、メルカプトプリンの場合は、メルカプトプリンヌクレオチドを活性化する作用が強いことが示唆されました。これらの結果は、チオプリン系薬剤の投与量は、患者のTPMT活性によって調整する必要があることを示しています。

チオプリン系薬剤の投与：TPMT活性による調整が重要

チオプリン系薬剤の投与量は、患者のTPMT活性によって調整する必要があります。TPMT活性は、遺伝子検査によって調べることができます。TPMT活性が高い患者さんは、薬剤の代謝が速いため、より高用量の薬剤が必要になります。一方、TPMT活性が高い患者さんは、薬剤の代謝が遅いため、低用量の薬剤で十分な効果が得られます。適切な用量の薬剤を投与することで、薬剤の効果を高め、副作用を減らすことができます。

健康への影響：チオプリン系薬剤は副作用のリスクも伴う

チオプリン系薬剤は、効果的な抗がん剤ですが、副作用のリスクも伴います。副作用には、骨髄抑制、肝機能障害、消化器症状などがあります。適切な用量の薬剤を投与し、患者の状態を注意深く観察することで、副作用を最小限に抑えることができます。ラクダ博士は、チオプリン系薬剤の投与には、医師の指導が不可欠だと考えています。

ラクダ博士の結論

チオプリン系薬剤の治療効果は、患者のTPMT活性によって大きく影響されます。TPMT活性は、遺伝子検査によって調べることができ、薬剤の投与量を調整することで、治療効果を高め、副作用を減らすことができます。この研究は、チオプリン系薬剤の投与に関する重要な情報を提供し、より安全で効果的な治療に役立つでしょう。