健康な成人におけるホスホジエステラーゼ5型阻害剤バルデナフィルの認知機能への影響: 行動-脳波研究

著者: BloklandA, PrickaertsJ, RamaekersJ G, ReneerkensO A H, SambethA, SteinbuschH W M

原題: The effects of the phosphodiesterase type 5 inhibitor vardenafil on cognitive performance in healthy adults: a behavioral-electroencephalography study.

概要

ホスホジエステラーゼ5型阻害剤（PDE5-I）であるバルデナフィルは、健康な若年成人の記憶力や実行機能を有意に改善しませんでした。脳波（EEG）にいくつかの軽微な影響が見られましたが、本研究は、健康な動物で観察されたPDE5-Iの認知増強効果を裏付けるものではありませんでした。

論文詳細　

原文の要約 :

Phosphodiesterase type 5 inhibitors (PDE5-Is) improve cognitive performance of rodents, but the few human studies investigating their effects did not systematically investigate cognitive effects and the results have been quite contradictory. Therefore, we examined whether the PDE5-I vardenafil impro...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

PDE5阻害剤バルデナフィルが健康な成人の認知機能に及ぼす影響

PDE5阻害剤は、動物実験において認知機能を改善することが示されていますが、ヒトにおけるその効果については、研究結果が矛盾しており、体系的な調査は行われていませんでした。そこで、本研究では、健康な若年成人を対象に、PDE5阻害剤バルデナフィルが記憶力や遂行機能にどのような影響を与えるのか、脳波（EEG）を用いて調査しました。

バルデナフィルは認知機能にほとんど影響を与えない

研究の結果、バルデナフィルは、被験者の記憶力や遂行機能に目立った影響を与えないことが判明しました。ただし、バルデナフィル20mg投与後には、反応時間課題における誤答が増加しました。また、単語の符号化中に、バルデナフィル投与群ではP300波の振幅が全体的に小さくなりました。さらに、空間記憶課題において、バルデナフィル10mg投与群では、プラセボ投与群に比べて前頭部（Fz）におけるN400波の振幅が大きくなりました。また、バルデナフィル投与後には、頭痛や倦怠感の報告が増加しました。これらの結果は、バルデナフィルが健康な成人の認知機能に顕著な影響を与えないことを示唆しています。

ヒトと動物実験で異なる結果

この研究の結果は、健康な動物におけるPDE5阻害剤の認知機能改善効果を裏付けるものではありません。ヒトにおけるPDE5阻害剤の認知機能への影響については、さらなる調査が必要です。特に、この研究では、バルデナフィルが健康な成人の認知機能にほとんど影響を与えないことが示唆されています。しかし、一部の課題では、バルデナフィルが脳波に影響を与える可能性が示唆されました。これらの知見は、PDE5阻害剤がヒトの脳にどのような影響を与えるのか、今後さらに詳しく調べる必要があることを示唆しています。

ラクダ博士の結論

バルデナフィルは、健康な成人の認知機能に目立った影響を与えないことが示唆されました。しかし、一部の課題では、脳波に影響を与える可能性が示唆されました。PDE5阻害剤がヒトの脳にどのような影響を与えるのか、今後の研究が必要です。また、この研究は、ヒトと動物実験で異なる結果が得られることがあることを示しています。これは、動物実験の結果をヒトにそのまま当てはめることは難しいことを示唆しています。