多嚢胞性卵巣症候群の女性が体外受精を受ける際の、ゴナドトロピンによる排卵誘発中のメトホルミンは、短期間でOHSSを軽減しない：無作為化プラセボ対照試験

著者: BalenA H, BarthJ H, BrewerC, JacobS L, PictonH M, TangT

原題: A short course of metformin does not reduce OHSS in a GnRH antagonist cycle for women with PCOS undergoing IVF: a randomised placebo-controlled trial.

概要

多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）のGnRH拮抗薬補助生殖治療サイクルを受けている153人の女性を対象としたこの無作為化比較試験では、メトホルミンは卵巣過剰刺激症候群（OHSS）の発生率を低下させなかった。しかし、臨床妊娠率と出生児生存率を有意に低下させた。

論文詳細　

原文の要約 :

STUDY QUESTION: Does 'metformin' reduce the incidence of ovarian hyperstimulation syndrome (OHSS) for women with polycystic ovary syndrome (PCOS) undergoing a GnRH antagonist assisted conception treatment cycle? SUMMARY ANSWER: A short course of metformin does not reduce the incidence of OHSS for w...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

糖尿病薬は卵巣過剰刺激症候群の予防に効果なし

この研究は、多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）を持つ女性がGnRHアンタゴニストを用いた体外受精（IVF）を受けている際に、メトホルミンが卵巣過剰刺激症候群（OHSS）の発症を抑制するかどうかを調査しました。

この研究では、PCOSの診断基準を満たす153人の女性を対象に、メトホルミン群とプラセボ群にランダムに割り付け、GnRHアンタゴニストを用いた標準的なIVF/ICSI治療サイクルを実施しました。メトホルミンまたはプラセボは、刺激開始前に投与を開始し、卵子回収まで継続しました。

その結果、中等度から重度のOHSSの発症率は、メトホルミン群（16％）とプラセボ群（12.2％）で有意な差はありませんでした（95％CI -0.08-0.16、P=0.66）。総ゴナドトロピン用量、回収された卵子の数、受精率にも有意な差は見られませんでした。しかし、メトホルミン群では、サイクル開始あたりの臨床妊娠率（CPR）が有意に低下し（プラセボ群48.7％、メトホルミン群28.6％；95％CI 0.04-0.35、P=0.02）、出生率も有意に低下しました（プラセボ群51.6％、メトホルミン群27.6％；95％CI 0.05-0.40、P=0.02）。さらに、民族性を考慮すると、メトホルミンまたはプラセボの投与に関係なく、南アジアの人口では妊娠成績が有意に低下しました（サイクル開始あたりのCPR、白人コーカソイド＝44.4％、南アジア＝19.4％；95％CI 0.06-0.39、P=0.01）。

メトホルミンは卵巣過剰刺激症候群の予防に効果なし

この研究は、メトホルミンが、GnRHアンタゴニストを用いたIVF治療サイクルを受けているPCOSの女性におけるOHSSの発症率を低下させないことを示しました。この結果は、GnRHアンタゴニストを用いた治療サイクルにおいて、メトホルミンを経験的に投与することは推奨されないことを示唆しています。

健康への影響と日常生活への応用

PCOSの女性は、不妊症やOHSSなど、様々な健康上の問題を抱える可能性があります。この研究は、メトホルミンがOHSSの予防に効果がないことを示唆しており、PCOSの治療や妊娠計画を立てる際には、医師との相談が不可欠です。

ラクダ博士の結論

砂漠では、ラクダは水分不足に悩まされることが多く、水分を補給するためにオアシスを探します。メトホルミンは、砂漠のラクダにとって、オアシスのような存在であると考えられていました。しかし、この研究では、メトホルミンはOHSSという砂嵐を止める効果はないことが明らかになりました。PCOSの女性は、砂漠を歩くラクダのように、健康上の問題に注意しながら、医師の指導のもと、適切な治療を受けていくことが重要です。