子癇の治療における、当帰芍薬散の効力：漢方薬ライブラリーのin vitroスクリーニングによる、薬物の再利用方法

著者: EndoMasayuki, KakiganoAiko, KawanishiYoko, KimuraTadashi, MatsuyamaTatsuya, MimuraKazuya, NakamuraHitomi, TomimatsuTakuji, YagiKazunobu

原題: Potency of Tokishakuyakusan in treating preeclampsia: Drug repositioning method by in vitro screening of the Kampo library.

概要

この研究では、妊娠高血圧症候群の潜在的な治療薬を特定するために、伝統的な日本の薬（漢方）のライブラリーをスクリーニングしました。この研究では、当帰芍薬散（TS）が胎盤成長因子（PlGF）の産生を増加させ、試験管内で管形成を改善したことが判明し、妊娠高血圧症候群における潜在的な治療効果が示唆されました。これらの知見を臨床試験で確認するためには、さらなる研究が必要です。

論文詳細　

原文の要約 :

INTRODUCTION: Preeclampsia therapy has not been established, except for the termination of pregnancy. The aim of this study was to identify a potential therapeutic agent from traditional Japanese medicine (Kampo) using the drug repositioning method. MATERIALS AND METHODS: We screened a library of 7...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

妊娠高血圧症候群治療における当帰芍薬散の有効性：漢方薬ライブラリーによるin vitroスクリーニングを用いた薬剤再開発法

妊娠高血圧症候群の治療法は、妊娠の中絶を除いて確立されていません。本研究の目的は、薬剤再開発法を用いて、伝統的な日本医学(漢方)から妊娠高血圧症候群の治療薬候補を見つけることでした。

妊娠高血圧症候群の治療における当帰芍薬散の有効性

本研究では、妊娠高血圧症候群の治療薬候補を見つけるため、74種類の漢方薬ライブラリーをスクリーニングしました。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いて、これらの薬物の血管新生効果を調べました。各薬物100μg/mLで処理した条件培地中の胎盤成長因子(PlGF)レベルを酵素結合免疫吸着測定法で測定しました。スクリーニングした薬物が細胞生存率に影響を与えるかどうかを評価しました。PlGF誘導薬の血管新生効果を評価するために、管形成アッセイを実施しました。候補薬物10、50、100、200μg/mLを投与した場合の用量相関実験と、1、2、3、6、12、24時間での時間経過実験でPlGFを測定しました。また、候補薬物と100ng/mLの可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)を用いて管形成アッセイを実施しました。候補薬物のPlGF産生を栄養膜細胞(BeWoとHTR-8/SVneo)で測定しました。マン・ホイットニーのU検定または一元配置分散分析とNewman-Keulsの事後検定を実施しました。P値<0.05を有意とみなしました。

当帰芍薬散の有効性

PlGFを誘導した7種類の薬物のうち、当帰芍薬散(TS)、十全大補湯、小柴胡湯は細胞生存率を低下させませんでした。TSは管形成を有意に促進しました(P=0.017)。TSの投与は、用量依存的かつ時間依存的にPlGF発現を増加させました。TSはsFlt1によって抑制された管形成を有意に改善しました(P=0.033)。TSは、BeWo細胞(P=0.001)ではPlGF産生を増加させましたが、HTR-8/SVneo細胞(P=0.33)では増加させませんでした。