肝移植後の維持期にある患者におけるニルマトレルビル/リトナビル誘発性タクロリムス血中濃度上昇

著者: ArakakiShingo, NakamuraKatsunori, ShiohiraHideo, UeharaHitoshi, UeharaWataru, YamamotoKazuko

原題: Nirmatrelvir/ritonavir-induced elevation of blood tacrolimus levels in a patient in the maintenance phase post liver transplantation.

概要

本症例報告は、COVID-19の抗ウイルス薬であるニルマトレルビル/リトナビルと、肝臓移植患者に用いられる免疫抑制剤であるタクロリムスの間の潜在的な薬物相互作用を強調しています。この相互作用により、タクロリムスの血中濃度が大幅に上昇し、吐き気と嘔吐が発生しました。したがって、肝臓移植患者では、ニルマトレルビル/リトナビルによるCOVID-19治療中は、タクロリムスの用量を減量するか、中止する必要があります。

論文詳細　

原文の要約 :

Nirmatrelvir is an orally administered anti-SARS-CoV-2 drug used in combination with ritonavir, the drug-metabolizing cytochrome P450 (CYP) 3A inhibitor, to evade metabolism and extend bioavailability. Meanwhile, the immunosuppressant tacrolimus is a CYP3A4/5 substrate, and CYP3A inhibition results ...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

肝移植後維持療法中の患者におけるニルマトレルビル/リトナビルによるタクロリムス血中濃度上昇

薬物療法では、薬物間の相互作用は、患者にとって深刻な問題となることがあります。この研究は、ニルマトレルビル/リトナビルという薬物が、肝移植後維持療法中の患者におけるタクロリムスの血中濃度を上昇させる可能性を示唆したものです。ニルマトレルビル/リトナビルは、COVID-19の治療薬として使用されています。タクロリムスは、免疫抑制剤として、臓器移植後の拒絶反応の予防などに使用されています。

研究では、肝移植後維持療法中でタクロリムスを服用しているCOVID-19患者が、ニルマトレルビル/リトナビルを服用した後に、タクロリムスの血中濃度が著しく上昇した症例を報告しています。この患者は、タクロリムスを服用後、ニルマトレルビル/リトナビルを服用し始めた3日後に、タクロリムスの血中濃度が測定限界を超えました。このことから、ニルマトレルビル/リトナビルは、タクロリムスの代謝を阻害し、タクロリムスの血中濃度を上昇させる可能性があると考えられています。

この研究は何を示しているのでしょうか？

この研究は、肝移植後維持療法中の患者が、ニルマトレルビル/リトナビルを服用する際には、タクロリムスの血中濃度が上昇する可能性があることを示唆しています。そのため、肝移植後維持療法中の患者が、ニルマトレルビル/リトナビルを服用する場合は、タクロリムスの血中濃度を注意深くモニタリングする必要があります。タクロリムスの血中濃度が上昇すると、副作用のリスクが高まるため、必要に応じてタクロリムスの服用量を調整する必要があります。

健康への影響と生活への応用

タクロリムスは、免疫抑制剤であるため、免疫力の低下や感染症のリスクを高めます。ニルマトレルビル/リトナビルは、タクロリムスの代謝を阻害し、タクロリムスの血中濃度を上昇させる可能性があるため、タクロリムスの副作用のリスクを高める可能性があります。そのため、肝移植後維持療法中の患者が、ニルマトレルビル/リトナビルを服用する場合は、医師とよく相談し、治療のメリットとリスクを理解した上で、治療方法を決めることが重要です。

ラクダ博士の結論

薬物療法は、砂漠の旅のように、予測不能な側面があります。この研究は、ニルマトレルビル/リトナビルという薬物が、タクロリムスの血中濃度を上昇させる可能性を示唆しています。砂漠の旅では、予期せぬ砂嵐に遭遇する可能性があります。薬を服用する際には、医師とよく相談し、薬物間の相互作用に注意することが大切です。