サイトカイン誘発性誘導型一酸化窒素合成酵素の発現に対する、アプロチニンとε-アミノカプロン酸の異なる影響

著者: HillG E, RobbinsR A, TaylorJ A

原題: Differing effects of aprotinin and epsilon-aminocaproic acid on cytokine-induced inducible nitric oxide synthase expression.

概要

プロテアーゼ阻害剤のアプロチニンとε-アミノカプロン酸（EACA）は、サイトカイン誘導性iNOS発現および一酸化窒素産生に対するインビトロ効果を評価した。これらの阻害剤は、サイトカイン誘導性iNOS発現および一酸化窒素産生を減少させることがわかった。

論文詳細　

原文の要約 :

Cell expression of inducible nitric oxide synthase (iNOS) is increased by cytokines, resulting in high endogenous levels of nitric oxide. Expression of iNOS has been implicated in organ injury, including myocardial reperfusion injury. Serine protease inhibitors reduce cytokine-induced iNOS expressio...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

アプロチニンとε-アミノカプロン酸のサイトカイン誘導性iNOS発現に対する異なる影響

細胞における誘導型一酸化窒素合成酵素（iNOS）の発現は、サイトカインによって増加し、高レベルの一酸化窒素が生成されます。iNOSの発現は、心筋の再灌流障害を含む臓器損傷に関与していると考えられています。セリンプロテアーゼ阻害剤は、サイトカイン誘導性iNOS発現を抑制することが知られています。心臓手術後の出血抑制に用いられるプロテアーゼ阻害剤、アプロチニンとε-アミノカプロン酸（EACA）について、サイトカイン誘導性iNOS発現と一酸化窒素産生に対するin vitroでの影響を評価しました。

アプロチニンとε-アミノカプロン酸はサイトカイン誘導性iNOS発現に異なる影響を与える

この研究は、アプロチニンとε-アミノカプロン酸がサイトカイン誘導性iNOS発現に対して異なる影響を与えることを示唆しています。アプロチニンはiNOSの発現を抑制する効果が強く、一方ε-アミノカプロン酸はそれほど効果的ではありませんでした。

心臓手術後の出血抑制におけるアプロチニンの役割

アプロチニンは心臓手術後の出血抑制に効果的であることが知られています。本研究の結果は、アプロチニンがサイトカイン誘導性iNOS発現を抑制することで、心臓手術後の臓器損傷を軽減する可能性を示唆しています。心臓手術を受ける際には、出血抑制のための治療法として、アプロチニンが用いられる場合もあります。

ラクダ博士の結論

アプロチニンとε-アミノカプロン酸は、どちらも心臓手術後の出血抑制に用いられるプロテアーゼ阻害剤ですが、サイトカイン誘導性iNOS発現に対する影響は異なります。アプロチニンはiNOSの発現を抑制する効果が強く、心臓手術後の臓器損傷を軽減する可能性があります。ε-アミノカプロン酸はアプロチニンほど効果的ではありませんでしたが、それでもある程度の効果は期待できます。この研究は、心臓手術後の出血抑制に用いられるプロテアーゼ阻害剤の選択において、iNOSの発現抑制という観点からの検討が必要であることを示唆しています。