ラット線条体におけるアセチルコリンの回転率に対するクロザピンとハロペリドールのインビボ作用

著者: CheneyD L, CostaE, RacagniG, TrabucchiM

原題: In vivo actions of clozapine and haloperidol on the turnover rate of acetylcholine in rat striatum.

概要

ハロペリドールとクロザピンは、ラットの線条体と皮質におけるアセチルコリン（ACh）の含量と回転率（TRACh）に対する効果について研究されました。両方の薬物は、アポモルフィンによって引き起こされる線条体のTRAChの減少を逆転させましたが、各抗精神病薬は、定常状態とTRAChに異なる影響を与えました。クロザピンの抗コリン作用は、この薬物で観察される錐体外路症状の欠如を説明できる可能性があります。

論文詳細　

原文の要約 :

We have measured acetylcholine (ACh) content and turnover rate (TRACh) in striatum and cortex of rats receiving haloperidol and clozapine i.p. Both clozapine (30 mumol/kg) and haloperidol (10 mumol/kg) reverse the decrease in striatal TRACh elicited by apomorphine (11 mumol/kg) while each antipsycho...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

精神疾患の治療薬におけるアセチルコリン代謝の謎解き

精神疾患の治療薬であるクロザピンとハロペリドールが、ラットの脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの代謝にどのような影響を与えるのか、という興味深い研究ですね。脳内でアセチルコリンは神経細胞間の情報伝達を担う重要な役割を担っているのですが、この研究では、クロザピンとハロペリドールが、それぞれ異なるメカニズムでアセチルコリンの代謝に影響を与えていることが明らかになりました。

クロザピンは、アセチルコリンの量を減らさずに、アセチルコリンの代謝速度を抑制することがわかりました。一方、ハロペリドールは、アセチルコリンの量を変化させずに、代謝速度を促進することがわかりました。これらの違いは、クロザピンとハロペリドールが精神疾患に与える影響の仕方の違いを説明する重要な手がかりになるかもしれません。

アセチルコリン代謝と副作用の関係

さらに興味深いのは、クロザピンが、アセチルコリンの代謝を抑制することで、ハロペリドールのような錐体外路症状と呼ばれる副作用を抑制している可能性があるということです。錐体外路症状は、筋肉の硬直や震えなどの運動障害を引き起こす副作用ですが、クロザピンはハロペリドールと比べて、これらの副作用が出にくいことが知られています。

ラクダ博士の結論

クロザピンとハロペリドールは、どちらも精神疾患の治療薬として有効な薬ですが、アセチルコリンの代謝に与える影響が異なるため、副作用も異なってくる可能性があります。今後、アセチルコリンの代謝と精神疾患の治療薬の関係について、さらに研究が進められることが期待されます。研究の成果は、より安全で効果的な精神疾患の治療薬の開発に役立つでしょう。