HER2陽性早期乳癌患者の、術前療法と術後療法

著者: HarbeckNadia

原題: Neoadjuvant and adjuvant treatment of patients with HER2-positive early breast cancer.

概要

本稿では、HER2陽性（HER2+）の早期乳がん（EBC）の治療の現状について論じ、術前および術後の治療法の進歩を強調する。HER2標的療法の利用により、転帰が大幅に改善され、病理学的完全奏効（pCR）の状況に基づいた個別化された治療アプローチが可能になった。

論文詳細　

原文の要約 :

The availability of HER2-targeted therapy has dramatically improved patient outcome in HER2-positive (HER2+) early breast cancer (EBC) as recently demonstrated by the EBCTCTG metaanalysis on trastuzumab in HER2+ EBC: Adding trastuzumab to chemotherapy has reduced recurrence rates and breast-cancer r...掲載元で要旨全文を確認する

ラクダ博士の論文要約ブログ

HER2陽性早期乳がんの術前・術後療法

乳がん治療においてHER2標的療法の登場は、HER2陽性（HER2+）早期乳がん（EBC）の患者の転帰を劇的に改善しました。HER2+ EBCに対するトラスツズマブに関するEBCTCTGメタ分析では、化学療法にトラスツズマブを追加することで、再発率と乳がん関連死亡率が3分の1に減少することが示されました。現在、術前療法は、II期またはIII期の腫瘍を持つ女性に対する標準治療となっています。手術後の病理学的完全奏効（pCR）状態は、術後全身療法の個別化に利用できます。pCRは、特にホルモン受容体（HR）陰性HER2+ EBCにおいて、良好な患者の転帰と相関しています。FDAメタ分析で示されています。

HER2陽性早期乳がんの個別化治療

さらに、非pCRの患者に対しては、KATHERINE試験の結果に基づいて、術後T-DM1を14サイクル行うことが、新たな術後療法の標準となりました。腫瘍負荷が低い患者（cN0 cT1）には、一次手術を検討することができます。この低リスクサブグループでは、APT試験の結果に基づいて、12週間の術後パクリタキセル+トラスツズマブを1年間行うと、良好な転帰が得られることが示されています。このような複雑な術前・術後治療の連続性を最適化するためには、最初から多職種チームによる連携が不可欠です。

HER2陽性早期乳がんの未来

現在、HER2+ EBCにおける臨床試験では、低リスク疾患またはpCRを達成した患者におけるさらなる治療の減量化、あるいは非pCR患者における治療の強化が評価されています。ツカティニブやトラスツズマブ・デルキステカンなどのHER2+転移性乳がん（MBC）に対する新規承認薬、さらには免疫療法との併用療法が、非pCR設定におけるT-DM1単独療法の有効性を向上させるために評価されています。減量化に関しては、WSG ADAPT試験で、治療過剰を回避し、転帰を損なうことなく術前療法を個別化することが可能であることが示されました。DECRESCENDO、COMPASS-HER2などのさらなる減量化試験が現在進行中です。

ラクダ博士の結論

HER2陽性早期乳がんの治療は、まさに砂漠の道のように、複雑で変化し続けています。しかし、研究者たちは、患者一人ひとりに最適な治療法を見つけるために、砂漠を旅するように、常に新しい知識を探求し続けています。この研究は、HER2陽性早期乳がんの治療において、個別化治療の重要性を改めて示しています。患者一人ひとりの状況に合わせて、適切な治療法を選択することが、砂漠を安全に旅する道しるべとなるでしょう。